日本と海外との相続制度の違いについて


Q:アメリカの生活が長くなり、こちらでの資産も多少増えてきました。将来的には遺産や相続手続きについても考えておく必要があると思いますが、日本とアメリカでは相続制度にどのような違いがありますか?

A:日本は相続に関して、いわゆる「包括承継主義」を採用しています。「包括承継主義」では、相続人の死亡によって、その全て財産と債務は直ちに相続人に承継されると考えます。「包括承継主義」を採用している国は、日本のほかにドイツ、フランスなどがあります。
これに対してアメリカ、イギリス、香港、シンガポールなどいわゆる英米法系といわれる国々は「管理清算主義」を採用しています。「管理清算主義」では、相続人の死亡により遺産はいったん「人格代表者(Personal Representative)」の管理下に入り、清算手続きを経た後に相続人に分配されることになります。この清算手続きはプロベイト(probate)と称され、一種の裁判手続として行われます。

 「人格代表者(Personal Representative)」とは、現地で相続手続を実施する者のことで、相続人等からの申請に基づき、現地の裁判所が任命します。人格代表者が行う清算手続きは、遺言の確認、相続人や相続範囲の確定、債務の清算、相続税の支払い等、相続に関するあらゆる手続きを含んでおり、これらの清算完了後の残余財産が相続人に移転分配されることになります。

 なおアメリカにおいても、すべての相続手続きについてプロベイトが適用されるわけではありません。アメリカでは各州法によって具体的な手続きを定めていますので、まずは関係する州の取り扱いについて事前に充分調べた上で、求められる手続きを踏んでいく必要があります。

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