海外在住中に日本法に基づく遺言を作成する場合


Q:私は日本国籍で、20年ほどアメリカに住んでいますが、日本にも複数の不動産や預金口座があります。日本に住む子供たちに相談したところ、遺言をのこすなら、日本の方式で遺言を作成して欲しいとのことでした。アメリカで、日本法に基づいた遺言を作ることはできますか。

A:日本国内の遺産について相続手続きを行う場合は、外国法に基づく遺言よりも、日本法に基づき日本語で作成した遺言のほうが、スムーズに手続きを進めることができます(Q「海外法に基づく遺言による、日本国内財産の相続手続き」参照)。

 では外国にいながら、日本法に基づいた遺言を有効に作成するにはどのような方法があるでしょうか。

 日本国籍がある方は、アメリカ在住中でも、日本法に基づいた遺言を作成することができます(本国地法)。

 なお、日本法における遺言の方式には、主に自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言があります。

 自筆証書遺言は「全文自筆」(もっとも、令和2年の民法改正により自筆証書に添付する財産目録はワープロで作成することも可能となりました。)「作成日付」「署名捺印」があれば形式的に有効とされるため、もっとも簡単に遺言を作成できる方法です。

 公正証書遺言は、遺言者が公証人に伝えた遺言内容を公証人が公正証書として作成する遺言です。資格を有する公証人が作成し、2名の証人を必要としますので、自筆証書遺言に比べて証拠力が高く、より確実な遺言方法といえます。

 日本国内では公証役場で作成できますが、海外で公正証書遺言を作成する場合は、在外領事館の領事が公証人となることができます(民法984条)。ただし、領事による公正証書遺言は、日本で作成する公正証書遺言とは形式が異なり、実際の相続手続き時に窓口で拒否されるなど、スムーズにいかない恐れもあります。したがって、日本に帰国して公証役場で公正証書遺言を作成することが困難な場合には、ひとまず自筆証書遺言を作成しておくことになるでしょう。

 なお、日本国内の預金を解約する場合、遺言があっても、遺言執行者(遺言の内容を実現する者)を決めていなければ、実務上、相続人全員の署名等を要求される場合が大半です。そのため、海外で日本法に基づく遺言書を作成する場合には、遺言で遺言執行者を決めておくことが、手続きをスムーズに進めるためのポイントです。

 日本国内にある遺産に関する遺言作成については、当協会で扱っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

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