日本法に基づく遺言の形式的要件と遺留分


Q:日本に住んでいた日本国籍を持つ母が亡くなりました。母の相続人は、私と姉の2名です。私が帰国したところ、母の日記を見つけました。そこには「A子(姉)に私の財産を全て相続させる」と母の筆跡で書かれてありました。これは遺言として有効でしょうか。私は全く相続権が無いのでしょうか?

A:

1.遺言の形式的要件

 遺言の方式が有効かどうかは「遺言の方式の準拠法に関する法律」に基づいて決まります。お母様の日記が日本で書かれたのであれば、日本法に基づいて判断されることになります。

 自筆で作成された遺言(自筆証書遺言)の場合、その全文、日付、氏名が被相続人の自筆で書かれており(自筆証書自体はワープロで作成することはできませんが、添付する財産目録はワープロで作成することができます。)、押印されている必要があります(実印である必要はなく、認印でも有効とされます)。

2.遺留分減殺請求

 遺言で、自分の相続分をゼロとされた者は、何も主張することができないのでしょうか。

 日本の民法では、相続人に対し、一定割合については遺言によっても奪えないものと定めました。この遺言によっても奪えない相続人の権利を遺留分(いりゅうぶん)といいます。遺留分は、相続人のうち、配偶者、子(または代襲相続人)、直系尊属のみに認められています。

 あなたの場合、お母さんの相続人はあなたとお姉さんの2名なので、あなたの法定相続分は2分の1であるところ、あなたの遺留分はこの2分の1、すなわち4分の1となります。お母さんの遺言では、あなたの相続分をゼロとされていますので、あなたはお姉さんに対して、自身の遺留分が侵害されているものとして、この侵害額を請求することができます(遺留分侵害額請求といいます)。

 なお遺留分侵害額請求は、遺言の内容を知って1年以内に請求する必要がありますので(民法1048条)、注意が必要です。

 自分に不利な内容の遺言が出てきたなど、遺留分の請求ができるかどうかを確認したい場合には、お気軽にご相談ください。

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